群馬県の渡良瀬渓谷にあるヨコミゾマコト氏設計の富弘美術館は、2002年のコンペによるもので、1200点の中から選ばれたものである。敷地は山の中で、目の前にはダムのある大きな湖が広がる。星野富弘氏は、重度の身体的ハンディを持つ作詩画家で、その作風は、決して抽象的な作品ではない。そこにこの案が選ばれたことに、この建築の意味があるように思う。 美術館のプランは、正方形の平屋建ての箱の中に、幾つもの大きさの異なる円形の部屋がランダムに入ったもの。その構成は、円を用いているものの、メイン的な要素は逆に消え、非中心的となっている。また、様々な素材や開口を用いて、明るさ、暗さ、静けさ、にぎやかさ、暖かさ、涼しさを感じられる個々の部屋が構成されており、非均質的とも言える。円形の部屋は、幾つかの部屋と、点で接する。その接点に開口をもたせ、部屋と部屋、内部と外部など、さまざまなつながり、見え方を作り出している。 また、光取りのガラスブロック、カフェの開口部のドット、空調機覆いのパンチングなど、ディテールもプランと同じくシャボン玉のような模様を用いて、細部まで統一感がある。 夏には空調の効きが悪いなどのクレームが多かったと聞いていたが、この建築は、自然を感じられ、作家の温かみが伝わってくる建築となっている。
前へトップページ次へ | MY | 2006/11/ 7