祇王寺の吉野窓

京都嵯峨野にある法然上人の門弟良鎮によって創られた往生院の遺構をもとに、祇王寺は尼寺として現在に至る。寺の境内は楓、孟宗竹そして庭一面に広がる苔によって緑色の空気で満たされている。まるで何かの容器もしくは建物のように楓が屋根、竹が壁、そして苔が床の役割を果たしその緑色の空気を封じ込めている。小さな草庵の寺の中に足を踏み入れると、入り口から仏間を通して控の間が見通せ、正面に吉野窓が見える。障子一間分いっぱいに大きく切り取られた竹格子の丸窓の外に広がる緑がやわらかく窓から室内に広がり、その向こうに鉢植えの椿がぽつんと一輪花咲かせていた。その真紅の一花によって外の緑が一瞬にして引き締まり、視線を釘付にする。竹格子を通しているにもかかわらず、室内外が一体となり空間の仕切りが取り払われる。入り口から見える際の丸窓はその真の美しさを見せてくれないが、内部に入り視線の高さや位置を変えることによって、瞬時にその美しさに衝かれるのである。
また、障子を閉めたときには、影が虹の色に現れることから一名虹の窓ともよばれている。
前へトップページ次へ | KD | 2008/5/30